億男 川村元気 感想
とうとう、この時期の到来か...。
大賞に選ばれればベストセラー化間違いなしとも言われる、「2015年本屋大賞」のノミネート作品が発表されることになって...。
対象作品は、2013(平成25)年12月1日日曜日から2014(平成26)年11月30日日曜日の間に刊行された日本のオリジナル小説。
その中から、全国の書店員からの「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思った本が選ばれて投票されるのは、なかなか画期的な試み。
先日に耳にすることとなったのは、2014(平成26)年11月1日土曜日から2015(平成27)年1月4日日曜日までの間実施された一次投票で、全国461書店、580人の書店員からの投票による選出。
ノミネート作された10作品に対しての二次投票は、3月1日日曜日まで。
その10作品のうち、前年2014(平成26)月15日水曜日発売で、あのBRUTUS誌に連載の映画プロデューサー・川村元気による小説第二作『億男』(マガジンハウス)の選出は、嬉しかった。
前月に読み終えた本だけに...。
まさに、小気味よいテンポが快感で、あっという間に一気読みできる爽快感とともに、事の本質の奥深さを実感。
金のあり方にまつわる問題は、いかなる時代の変化があっても、的を突くものばかりなものだから...。
かの物語の主人公は、ごく平凡な図書館司書の一男。弟の借金2000万円を肩代わりし、妻や娘とも別居。
昼も夜も働きながら養育費と借金返済に人生を費やし、月に一度だけ娘と会うことが許されている身の上にあって...。
そんなある日のこと、思いもかけずに宝くじで3億円を当てることになって...。
しかし、その喜びも束の間、言いようのない不安に。一男は悶々とした末に、「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪ねることを決意。
ところが、九十九は何とホームレスに凋落...。しかも、悪いことに「お金と幸せの答えを教えてあげよう」と言わんばかりに、九十九は一男の持参した3億円を持ち逃げして失踪してしまって...。
やむなく一男は、自身の「お金と幸せの答え」と九十九が抱える秘密とを模索する過程において、ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、ジョン・ロックフェラー、ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツなど、数々の偉人たちの言葉と向き合うこととなって、30日間にわたるお金の冒険を繰り広げることになった果てに見たものとは...。
とにかく、各章ごとに起こる不意打ちに何度も心を揺さぶられ、わずかながらの光の射すことになるラストシーンには、泣かされた。
率直な印象としては、一種のブラックジョークをまじえたサスペンスに近い展開かなあ。
肝心要は、お金の稼ぎ方ではなく、人生における本人の生きざまによって、命運が左右されるということなのもしれない。
その手段としての、お金...。
たしかに書店へ足を運んでも、お金儲けのノウハウ本、貯蓄や投資やFXなどの実践本は並んでいる反面、「お金」の本当の意味を考察する本は見つからない。
そういった点でも、本書はとても深いことを考えさせてくれる指南書、とみなすのは大袈裟か???
やはり「家族の崩壊と再生」の物語を、サイドストーリーとして描かれていたことが大きいのかなあ、なかなか一筋縄ではいかない小説。
いずれにせよ、お金儲け話ではなく、友情や家族愛の物語として読むのが、心地良い感動を与えてくれる名作。
4月7日火曜日の「本屋大賞」の決定、かなってくれたら嬉しいなあ。
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