川村元気 仕事。 感想
先日に、前年2014(平成26)年10月15日水曜日発売の『億男』(マガジンンハウス)を読み終えた後のみならず、「2015年本屋大賞」へのノミネートとあって、川村元気の仕事ぶりへの関心の強まる今日この頃のこと。
『億男』を読み終えた勢いのまま、同年9月24日水曜日発売の『仕事。』(集英社)を購入。
雑誌『UOMO』の連載を通しての、川村元気としての「壁を乗り越え、一歩抜け出す」ための唯一無二の仕事術を単行本化したもので、仕事で世界を面白くしてきた12人に訊ねることとなった企画...。
山田洋次、沢木耕太郎、杉本博司、倉本聰、秋元康、宮崎駿、糸井重里、篠山紀信、谷川俊太郎、 鈴木敏夫、横尾忠則、坂本龍一。
錚々たる顔ぶれ。
たしかに、大人になってからのほとんどの時間、誰もが仕事をしているもの。
しかし、生計を得たいがために漫然と仕事をするだけと、人生を楽しくするための仕事をするのとでは、行動意欲の面において大きな違いがあって...。
それでも、同じ人間である以上、彼らが自分たちと同じ年の頃、何を想い、何を考え、 どう働いていたのか、どれだけ自身の可能性を高められたのか、自然と興味の湧いてしまう。
全体を通して、巨匠たちとの対談とインタビューでありながらも、川村元気自身のこれまでの小説と同様、独特のテンポの良さと読みやすさゆえに、エッセイに近いと言っていい。
表紙の帯の下に隠れている巨匠たちの名前が象徴するように、中のページを開いた12人の写真の背景も12色になっている細かい部分のデザインを通じたメッセージといい、まさにテンポのいい文章力にも長けた一冊だった。
特に、12人の巨匠たちに「僕と同じ年の頃、何をしていましたか?」という体当たりの問いかけ。
川村元気本人の現実的な悩みから出発しているからこそ、ヒットメイカーではない、一人の青年としての血が通っているもの。
変わることなく年下の青年からのストレートな問いかけにも偉ぶることなく応える巨匠たちの姿勢も本当に立派、どの告白も濃密で壮絶、ぐさぐさと胸に刺さる言葉の数々に圧倒されっぱなしだった。
まさに、12人の巨匠がまさに巨匠になるまでの軌跡が凝縮された古典としても、読み継がれるべき一冊。
多くのビジネス本のように明解な答えはない。
それぞれの環境や条件や人生によって違っていいということ。
ただひたすら、あきらめずに正解を探し続け、生み出したものはすべてが立派な「仕事。」であるということ。
仕事というのはそれほどまで粘り強く向き合ってはじめて「仕事。」になるということ。
すなわち、どれとして同じ結論がないことを、実感させてくれる。
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