松田龍平 映画 ジヌよさらば かむろば村へ いがらしみきお
原作は、2007(平成19)年から2008(平成20)年まで『小学館ビッグコミック』に連載された、いがらしみきおの漫画『かむろば村へ』。
銀行員でありながら、度重なるノルマによる切迫感から"お金アレルギー"になり、お金を一切使わない生活を目指して東北地方の寒村・かむろば村にやってきた主人公・高見武晴による、不思議な現象や曲者揃いの一筋縄ではいかない村人たちとの関わりと生活ぶり。 武晴の無鉄砲さと酒癖の悪さゆえの様々なトラブルが、本当に面白おかしく描かれていて....。
確かに夢中になってしまった。
いつの日か田舎暮らしがしたいという憧れの強いこともあってか、いろいろと考えさせられてしまって...。
その夢中になった原作を時系列にたどるならば、
「何も売らない、何も買わない、何もしないで生きてゆく」
すなわち原始共産制の物々交換を理想に描く武晴の、「金がなければ百姓もできない」と諭す村長・天野与三郎と、自身を神様として何もしないが考えは述べる"なかぬっさん"との関わりを通して、成長物語の描かれる第1巻。
第1巻での登場人物が本格的に暴れ始めるほか、隣市でヤクザに囲われている妖しい女子高生・青葉による武晴へのまとわりつき、武晴のヤクザからの青葉救出劇の面白おかしさ、といった一連の武晴のヘタレぶりの傍ら、みよんつぁんの奥さん探しや冬の村中の雪下ろしを手伝う姿といった誰にも素直で正直な姿勢の描かれる、第2巻。
32年後にはなくなってしまうという試算を発端とした、かむろば村の翻弄を中心に、政争の具にすべく暗躍する隣市市議と与三郎と因縁の深いヤクザにより、与三郎や旅館の板前・勝男(オクイシュージ)と、みょんつぁんのそれぞれの過去がつまびらかになる、第3巻。
政治という欲望と表裏のある大変人間臭い描写がより多くなり、主人公のラストの表情を描くための物語の展開を実感して...。
そして、本作の主人公は、武晴ではなく、村長・与三郎ではないのかという実感の強まってしまった、第4巻。
失礼ながら、感慨から前置きが長引いてしまった...。
あの連載終了から7年半近くの歳月が流れて....。
あの劇団「大人計画」主宰の松尾スズキによる監督・脚本・出演作品としてのスラップスティック・コメディの映画に...。
驚いたことに、かの2013(平成25)年4月より公開の映画『舟を編む』で第37回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞はじめ、あらゆる受賞の相次いだ松田龍平が、2015(平成27)年4月4日土曜日から公開の映画『ジヌよさらば~かむろば村へ~』で、主人公・高見武晴を演じるという。
となれば、2004(平成16)年公開のラブコメディ映画『恋の門』以来、11年ぶりに...。
「ジヌ」とは東北弁で銭あるいは金のこと...。
確かに何とも言いようのない響き...。
原作同様、何よりも村の空気感が温かいんだろうなあ。
確かに、全体に目を通してみて、自分の都合の良いように事を成すとは限らない。
それでも、かむろば村ではどのような問題でも解決するかのような想いでいっぱいに...。
出演者に関しては、村長・天野与三郎に阿部サダヲ、与三郎の妻・亜希子に松たか子、女子高生・青葉に二階堂ふみ、いそ子に片桐はいり、奈津に中村優子、助に村杉蝉之介、助の妻に伊勢志摩、青木に荒川良々、青砥に皆川猿時、勝男にオクイシュージ、みよんつぁんにモロ師岡。
なかぬっさんには、西田敏行。
肝心の松尾スズキ演じるは、多治見。
とうとう松田龍平もここまでに...。
振り返れば、2007(平成19)年2月より放送のNHK土曜ドラマ『ハゲタカ』 出演時の訓覇圭プロデューサーと演出の井上剛や、2009(平成19)年4月下旬からの宮藤官九郎演出舞台『メカロックオペラ R2C2』での伝手から出演することとなり、社会現象にもなった2013(平成25)年4月から放送のNHK朝ドラ『あまちゃん』が放送終了してから、もうそろそろ丸1年...。
脚本を手掛けた宮藤官九郎曰く、「世の中をなめた風情」の役をやっている時が素晴らしいからこそ、今後は虐げられたり、大きな声で叫ばなくてはならなかったりする状況の彼が見てみたいとのこと。
しかも、「我々クリエイターの発想力がどこまで松田龍平を壊せるか、まさに試される存在」と語っていて...。
もしかして、その一環による劇団「大人計画」からの出演依頼???
いずれにせよ、松田龍平のさらなる面白さに磨きがかかりそうで、楽しみだ。
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